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2013年7月13日 (土)

住宅地で鳴き交わすフクロウ

私の住んでいる街は、東京の大手町まで電車で1時間とかからない、千葉県北部の通勤圏の住宅地で、周辺に緑はもちろんなくはないですが、一言でいえば宅地化が進んでいる環境といえると思います。以前、このブログでも、「びっくり!フクロウ鳴いた!!」(2010年5月16日)として紹介しましたが、そんなこの場所で、たまにフクロウが鳴くのです。 今回は録音ができたので紹介します。

関東地方で(そして九州以北の日本の平野部の多くの場所で)、バードウォッチングをされない方から、「家の裏でフクロウが鳴きます」とうかがった場合、鳴いている「フクロウ」が何かということには大まかにいって二つの可能性があります。

ひとつは、アオバズクというハトぐらいの大きさのフクロウ科の鳥で、日本には初夏に渡来するいわゆる夏鳥、声は比較的軽く、「ホウ ホウ、ホウ ホウ、ホウ ホウ・・・」と続けて鳴きます。もうひとつの可能性は、フクロウ科の中の種名もフクロウという、日本に周年生息している体はハトよりずっと大きい鳥で、声はアオバズクなどよりずっと深く、「ホウホウ、ホホッホ、ホウホウ」(ほうほう、五郎助ほうほう)というものです。
 
おおざっぱなイメージとして、アオバズクは、東京などの大都市はともかく、地方都市レベルでは、街中の社寺林などでも見られることがあるでしょうが、フクロウがすんでいるのは、かなりの田園地帯だったり山奥といった感じだと思います。
 
そんなわけで、一般論として後者の種フクロウのほうが出会うのが大変といってよいでしょうが、今回自宅から聞こえたのはまさにこの種フクロウです。7月12日午前2時すぎに、窓を開けて、パソコンに向かって、締め切りに遅れた仕事をしている(涙)と、フクロウの声がかすかに聞こえます。
 
締め切りに遅れた仕事を一刻も早く進めるのがよいか、なかなか出会うことのできないフクロウの声をちゃんと聞くのがよいか、微妙な選択ですが、フクロウは街のバードウォッチャーにとってはあこがれの鳥です。ここは後者を優先し、ICレコーダー持ってサンダル履きで表に出ました。
 
室内で聞いていてはわかりませんでしたが、声はすぐそばです。しかも驚いたことに2羽で鳴き交わしています。遠いほうの個体は、耳で聞いた感覚だけからの判断ですが、100メートルほどは離れていそうです。
 

【音声】鳴き交わすフクロウ(2013年7月12日、千葉県北部; 1分55秒)

 

機材の調子が悪いのか、2回目の鳴き交わしの前後のあたりでノイズが変わっていて、ちょっと耳障りかもしれませんが、もったいないので時間的な編集はせずにアップロードしました(音声の増幅とノイズリダクションはかけています)。近い個体の声が割れているように聞こえますが、実際に聞いても、音割れしたようなやや悪声(失礼!)の個体でした。

後半の「ホホホホホホホ」という声はどんな声なのでしょうか。「西旧北区の鳥」(注)というイギリスで出版された本によると、「ゴロスケホウホウ」に当たる声は、"advertisement call"(訳語は「広告声」でしょうか)とされています。そして、「ホホホホホホホホ」にあたると思われる声は、"wowowowowowo"と書かれていて、「4番目の声までははっきりとクレッシェンドして、その後はおしまいに向かって小さくなる」としてあり、"contact-alarm call"(訳語は「接触・警戒声」でしょうか)となっています。また、「この声の機能ははっきりせず、いろいろな状況で発せられる。広告声(「ゴロスケホウホウ」)と交互に発せられることも稀でなく、とくに個体が興奮しているときにそうである」と書いてあります。

今回の状況も、手前の鳥は「ゴロスケホウホウ」に続けて「ホホホホホホホ」と鳴いていますが、遠くに聞こえる別個体と鳴き交わして興奮したのでしょうか。図鑑によると、フクロウが盛んに鳴くのは1〜2月頃からで、繁殖期は3〜5月ということです。現在はおそらく遅い番いでも、巣立ちヒナが手を離れようかというところで、大筋で繁殖は終わっているはずで、とても盛んに鳴く時期とは言えません。こんな時期に鳴き交わしたり興奮したり、何をしているのでしょうか。この近所がフクロウの繁殖には厳しい場所じゃないかという点を考えると、こういう場所に変なタイミングで出てきて一生懸命鳴いたりする鳥というのは、「びっくり!フクロウ鳴いた!!」でも書いたように、繁殖の機会がなくてぶらぶらしている、いわゆる「フローター」なのかもしれません。

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(注)「西旧北区の鳥(ヨーロッパ・中東・北アフリカの鳥類のハンドブック)」は、生物地理区の旧北区の西半分(=ウラル山脈以西のユーラシアと北アフリカ等を含む地域)の鳥のことは、種ごとに分布、形態、行動、生態、音声などなんでも書いてある、全9巻の百科事典のような本です(こういう本を「ハンドブック」と言います)。種フクロウは、分布のいちばん東端がサハリンと日本で、極東ロシアからユーラシア大陸を西へ横切り、スカンジナビア半島と東ヨーロッパまで分布しています。イギリス、フランス、ドイツなど西ヨーロッパにこそ分布しませんが、本書のカバーするウラル山脈以西のエリアにも分布がかかっているため、その第4巻(Cramp, S. ed. 1985. The Birds of the Western Palearctic. vol. 4. Oxford University Press, Oxford.)に記述があります。

【関連記事】 (このブログのアオバズクのエントリーから)

「アオバズクいるんだなぁ・・・」(2007年6月12日)


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コメント

こんにちは、始めてコメントさせていただきます。
実は私も千葉県北西部なのですが、一昨日近所の公園で始めてフクロウに遭遇しました!どちらの種類かはわからなにのですが地面から飛んで行ったその姿は遥かに鳩よりは大きかったです。
こんな所にいるものなのですね。。!

りょうさん、こんばんは。コメントありがとうございます。公園の地上にいたというのは珍しいですね。夜だったのでしょうか。ハトより遙かに大きくてフクロウ類ということだと、種フクロウなんでしょうね。

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