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2012年2月15日 (水)

世界的珍鳥ってどのぐらい珍しいの?〜ソデグロヅル(1)

Siberian_crane_01_2印旛沼(千葉県)の近くに12月に飛来したというソデグロヅル、すでに1度見に行ったのですが、今日(2月14日)代休が取れたので、あいにくの雨がちの天気でしたが見に行ってきました。ソデグロヅルは日本で珍鳥であるのみならず、世界的な珍鳥です。ここでは、ソデグロヅルがどんなに珍しいのか、世界と日本の状況を情報収集してみました。

 

●世界分布と個体数

国際ツル財団の作成になるこちらの地図で繁殖地、越冬地とおおまかな渡り経路が見られます。

地図でわかるように東西ふたつの繁殖地に分かれており、東は、サハ共和国(ヤクーティア)の北極海に近い地域(上記地図のno.7の周辺)と、西はオビ川下流域(no. 8 の周辺)です。

ジョンスガードという研究者の著した世界のツルのモノグラフによると、繁殖環境は、ヤクーティアでは、ツンドラと森林ツンドラ平原で沢山の湿地や沼地がある場所、西側のものは、タイガ北部の広大なコケの湿地だそうです(P. A. Johnsgard, 1983. Cranes of the World. Indiana University Press.)。

こういった環境は、我々のおおくは一生訪れることのない広大な原野なのでしょうが、こうやって飛んでくる鳥のことを考えれば、その場所がだめになれば、日本に飛んでくる鳥は減ってしまうし、逆にその場所の鳥の生存のために日本の自然環境が大切なのだということに思いいたります。我々は鳥たちを通じてはるかかなたの荒野と繋がっているのですね。

さて、東西にあるといいながら実際は西側の繁殖個体群は風前のともしびで、バードライフ・インターナショナルの種ごとのファクトシートその他のネット情報を探してみると、越冬地のイランのカスピ海沿岸(no. 15, 16周辺)では20世紀の末には10羽程度だったようですが、ここ数年は、1羽がやっと越冬するかどうかという状況のようです。また、インド北部ケオラデオ国立公園(番号がないですが、地図でグレーの渡りルートがインドに入り込んだ先端部)では2002年以来、越冬個体の記録がないそうです。

東の繁殖個体群の越冬地は長らく不明でしたが、1981年になって中国の揚子江下流の巨大な湖、ポーヤン湖とその周辺(no. 1)に越冬していることがわかりました。このリンクによれば、2008年にはポーヤン湖周辺で3,750羽の越冬が数えられているそうです。

現在このポーヤン湖での個体数がほぼ全世界の個体数となっているわけですが、このリンクをはじめいろいろな資料に、上流の三峡ダム建設による環境の変化がこの湖に及ぶと本種にも影響がある可能性があると書いてあります。近年の中国の経済発展を考えれば、現地の自然環境が大きく変化することは可能性としてはつねにあるように思われます。

このリンクによると、種としての脅威として、渡りの中継地と越冬地での、農業開発、油田開発、その他人間による土地利用の拡大による湿地の破壊と劣化が第一に挙げられています。西側の個体群では、渡り途上での狩猟が、減少と、回復が妨げられる原因となっているそうです。また中国では水鳥を狙って毒を流すとか、インドでは殺虫剤なども脅威に挙げられています。

こういったことから、バードライフ・インターナショナルは、ソデグロヅルを国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧のカテゴリの、Critically Endangeredという段階に位置づけています。

この段階は、日本の環境省のレッドリストのカテゴリでは「絶滅危惧IA」類に相当するもので、野生に生きのこっているものではいちばん危ないというランクです。本種の保護活動は、国際ツル財団といった国際的な団体も行っていますが、日本の鳥好きも、ソデグロヅルの未来がひらけるように手助けをしたいものです。

●日本での記録

日本では、日本鳥学会の日本鳥類目録(改訂第6版、2000)によると、北海道、秋田、石川、島根、山口、鹿児島、沖縄(沖縄島)で記録があるそうです。例数もごくごく少ないものと思います。そして、これは確認が必要ですが、今回の個体は、どうも千葉県初記録であるばかりでなく、関東地方でも初記録のようです。

じつは本種は、長いこと江戸時代の記録しか知られていませんでした。江戸時代の記録として、シーボルトが持ち帰ってライデンの博物館にある3点、それからニューヨークの自然誌博物館(1点)、イギリスの自然誌博物館(1点)などの標本があるそうです(たとえばウォーキンショウのモノグラフ、L. H. Walkinshaw, 1973. Cranes of the World. Winchester Press. による)。そのほか、1782(天明2)年、姫路に飛来して捕獲されたという幼鳥のリアルな絵図が残っていたりもします(佐々木英理子, 2011. 実況中継EDO. 板橋区立博物館.)

このような江戸の記録のあと、長らく記録がなかったのですが、はるかに下って、1959年の鹿児島県出水での観察が明治以降の初記録になります。

この時は、出水のツル保護監視員の又野末春さんの「みなれぬツル」というハガキで、東京から17時間の列車の旅で訪れた高野伸二さんと塚本洋三さんが確認されたものです(高野さんは、のちにバードウォッチングの定番図鑑、日本野鳥の会の「フィールドガイド日本の野鳥」を著す方、また塚本さんは、近年は野鳥や自然のモノクロ写真の保存活用の仕事をなさっている方です)。100年以上記録がなかったソデグロヅルの識別点が頭に入っていなかった塚本洋三さんのほろ苦いエピソードがこちらで読んでいただけます。

世紀の珍鳥ソデグロヅル(左)とマナヅル(バード・フォト・アーカイブス)(2006.2.27.)
(長いページですが、下から三番目の記事です) 

出水のソデグロヅルはその翌年同じ個体と思われるものが観察され、その次は、1981-82の冬に1羽が記録されています。塚本さんの文章にあるように、その後も、ときどきは(多くの場合1羽が)渡来
しますが、定期的に渡来するような状況ではありません。

ソデグロヅル(2)〜何食べてるんだろう?に続く)

(※ Siberian Crane Flyway Conservation Program の渡りルート図に貼っていたリンクが切れていましたので貼り直すとともに、分布図中の地点を示す番号も変わっていましたので、こちらの本文の番号を分布図に合わせました。<2013年1月>)

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コメント

印西市「白鳥の郷」に飛来していたソデグロズルは3月21日夜北帰行しました。昨年12月中旬から3ヶ月程越冬し、夜は「白鳥の郷」で休み、日が昇ると2Km位離れた栄町の水田で白鳥や青鷺、白鷺等と一日中餌取りをしていました。関東の人里に現れ昨年末は「白鳥の郷」と栄町の水田は見物人でパニック状態でした。多勢いの人が一挙に集結し一部マナー無い見物人が水田に無断で立ち入ったりし貧縮を買っていました。12月末には鳥獣保護員さんや鳥類調査員さんがきて規制をして下さり、正月半ば過ぎからは喧騒は収まり一部のマナーあるマニアだけになりました。一月末には遠くはスペインやアルゼンチンから北風吹く栄町の水田に見に来ていました。ソデグロズルも「白鳥の郷」と栄町の水田が気に入り、良い思い出を袖の中に入れて故郷に戻り、また この印旛の地に飛来して欲しいです。
今頃どの辺まで帰って行ったのだろうか。
ソデグロズルよ元気でな。

しょうちゃん、こんばんは。
ソデグロヅル飛去の情報ありがとうございました。3月21日夜ですか。ツルって晴天の日中に渡りを始めるのかと思っていましたが、この鳥はどんな風に飛び立ったのでしょうか。
鳥がアンハッピーになってはどんなに良い写真が撮れても自慢できないと思うのですが、マナーの悪い方がいらっしゃるのは困ったものですね。でも地元の関係の皆さんのおかげで十分春になるまで滞在したのですから、とてもよかったと思います。

こんにちは、突然の書き込みで失礼いたしました。
私も最後の飛び立ちは確認して居りません。
ただ21日午後2時過ぎに栄町の餌場の水田に居る所は確認しました。その後 リュックを背負った外人さんが一人 田圃の畦道に入り鶴を追いかけて居たのを数人が見かけて居り その後鶴は「白鳥の郷」に戻り 夕方再び上空を数十分旋回して一旦は「白鳥の郷」戻って夜までいて、私も毎朝栄町の餌場で早い時間から飛来するのを待って居ましたが来ませんでした。間もなく知人が来て「白鳥の郷」で昨夜は確認されたけど今朝は姿が見えないからと知らせてくれました。私も二日間程様子を見て居ましたが姿が見えないので投稿させて戴きました。もしかすると外人さんの行動がきっかけで鶴はこの地を離れてしまったのかといろいろな方と話して居りました。以上の様な状況です。

しょうちゃん、コメントありがとうございます。
そうですか、外人さん外国まで来て何やってるんだという気もしますが、まあ21日に上空を長時間旋回したことからすると、すでに飛び立ちの気分はまんまんで、遅かれ早かれ飛去したものかもしれませんね。これまで長期間滞在してくれたことは本当によかったと思います。地元の皆さんのご尽力にあらためて感謝します。

そうですね。kumagerasuさんのおっしゃられる通り「ソデグロヅル」も北帰行する気分になって居たのかも知れませんね。
それから「ソデグロヅル」が帰る前日の20日の午後3時過ぎ位だったと思いますが、鶴が餌場にしていた栄町の同じ水田に「アカツクシガモ」が飛来して餌取りをしていました。 滞在して居たのはほんの数時間ほどで 鳥獣保護員さんや鳥類標識調査員さんも高台から双眼鏡で観察されて居りました。
私も農道を歩いていた時、知りあいの方が情報を知らせてくれました。 その時はカメラも双眼鏡も持ち合わせて居りませんでしたから 少し離れた所から(約150メートル位)肉眼で確認しました。 あまり側に近ずきすぎて刺激を与えてはいけないと思いその場所で10分くらい観察してその場を離れました。 後から調査員さんに伺った処その後20分くらいで飛び去ってしまったそうです。 北帰行する渡りの途中でチョット「ソデグロヅル」に挨拶して羽根を休めていったのでしょうか。

こんばんわ。初めまして。ここを訪れ、読ませて頂き、ソデグロヅルに約2ヶ月寄り添えた事が、本当に奇跡的な事だったんだと改めて感じました。生涯二度とお目にかかれまいと思い、可能な限り画像とvideoを撮影しまくりました。北帰行直前の行動は、それまでとはとても違ったものでした。ことの始まりは、3月20日の夕方、白鳥沼には戻らず、餌場に居続け、この夜に抜けるんだと思いきや、午後9時以降に白鳥沼に戻ったらしく、翌朝5時半には、えさ場に戻り、いつも通りの姿に安心。その日の昼過ぎから、外人さんや、白い車に追われ、午後3時頃に白鳥沼に戻ったそうです。その後、午後5時前に飛び立ち、約30分間高高度で周囲を飛び回り、再び白鳥沼に着水。
日没までの存在は確認されていましたが、3月22日朝には、その姿は有りませんでした。早朝に飛び立つ姿、上空を飛翔する姿、日中に飛び立つ姿、餌を探す姿、ダンスする姿、白鳥沼に着水する為に、真上を通過する姿、本当に宝物です。これほどの姿に遭遇出来た事に感謝しています。今年の11月以降に戻って来る事を今から信じています。

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» ソデグロヅル(動画)111229-千葉県(リンク追加120223) [鴎舞時 / OhmyTime]
Siberian Crane Grus leucogeranus 111229- Japan. クロヅルより大きくタンチョウより小さい。♂は♀よりやや大きい。体部に汚れのような斑が見えるが、1年目の冬は頭部や頸にシナモン色が残るとされるのでこの個体は第2回以降と思われる。 シベリアと北西ロシアに分布し、中国、インド、カスピ海で越冬する。亜種はないとされるが、分布域が遠く二分されているので遺伝的差異が大きい可能性がある。世界での総個体数は約3000で、1980年代に中...... [続きを読む]

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