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2011年3月 6日 (日)

あの女性歌手とつながりが?〜まだまだ(笑)キガシラシトド(3)

Photo_2千葉県の北西部の水辺の草むらに飛んできたキガシラシトドについてあれこれ詮索する第3弾です。今回は和名シトドの文献調査(^^;)。

(第1弾、第2弾はこちら↓
キガシラシトド(1)〜君は地鳴きを聞いたか?
キガシラシトド(2)〜本場(?)アメリカのホオジロ科

 

●シトドって何だ?

キガシラシトドのシトドって何だ、というのがいろいろのブログ等にも書いてあります。現在、キガシラシトド、ミヤマシトドなどのようにアメリカ産のホオジロ科の和名に「シトド」という言葉が使われていますが、これはもともとどういう意味なのでしょう。

ためしに手元の広辞苑(第3版第2刷1984年)を引いてみると、

「しとど【巫鳥、鵐】(古くはシトト) (1)ホオジロの異称。 (2)ホオアカ、アオジ、クロジなどの総称。みこどり。」

としています。また、「図説日本鳥名由来辞典」(菅原浩・柿澤亮三, 1993. 柏書房)によると、

「しとと、しとど【ホオジロ、アオジ類】 ホオジロ、アオジ、クロジ類の古名。昔はホオジロを主にさしたようであるが、後には主にアオジを呼んでいる。 (中略)室町時代になると、“シトト”類の中で“あをじとど”(アオジ)と“ほほじろ”が区別して呼ばれるようになり、“しとと”は主にアオジをさすようになってくる。 (中略)江戸時代になると“あおじとど”が“あをじ”になり、また“くろじトド”“くろじ”(クロジ)が区別されるようになった。(後略)」

としなっています。

シトドはホオジロの古い名でした。方言名では「シトト」「ヒトト」ということもあるようですが、こういった名前は、ホオジロの特徴的な「ツチチ」という3音の地鳴きがもとになったのではと思えます。

アオジやクロジ等のほかのホオジロ科は「ツッ」などという一声の地鳴きですから、「図説日本鳥名由来辞典」が言うように、アオジなどを指すのは、転じて生じたものであることは筋が通っているように思えます(ただし、「図説日本鳥名由来辞典」は、しとどの語源は不明としつつ、「言元梯」(江戸時代後期の歌人・国学者である大石千引の著作)を引いて「鳴声というのが穏当であろう」としているのみです)。

ネット上には「シッ」と鳴く「とっと(鳥)」という語源説(松田道生さんが出もとでしょうか)も出ていますが、私には「シッ」という鳴き声の表現も、「とっと」という言葉で鳥を表すこともあまりしっくりこないのですがいかがでしょうか。

●あの女性歌手とつながりが?

さて、ここからは、東京の古いバードウォッチャー、大塚豊さんの書かれたエッセーによるところが大きいのですが、石川県の姓や地名に「ひとと(一青)」があり、これがこのシトドに繋がっているのだそうです(大塚豊, 2008. 「赤い風船に載って来た神の鳥」新鳥人暖話. ユリカモメno. 627. (日本野鳥の会東京支部))。

この文章によると、横浜市内にある「神鳥前川(しとどまえかわ)神社」のウェブサイトに「神鳥(しとど)考」という解説があり、「古来からの霊鳥で『之止止』(シトト)という鳥がいて」といった書き出しでこのことについての解説があるそうです(「神鳥(しとど)考」を含む神鳥前川神社のウェブサイト「由緒」ページはこちら)。

そこで自分でも調べてみると、民俗学者の谷川健一氏が地名について解説した文章に下記のように書かれていました。

「北陸地方の日本海沿岸は潟湖や沼沢地が多く、飛来する鳥たちの楽園であった。そこで鳥にちなむ地名も生まれた。一風変わっているのに、能登半島の中央部にある鳥屋(とりや)町(石川県鹿島郡)の一青(ひとと)、黒氏(くろじ)という地名がある。シトトはホオジロ、ホオアカ、アオジ、クロジなどのホオジロ類をひっくるめた呼称である。アオジはアオシトト、クロジはクロシトトのことである。アオシトトがアオヒトトに訛って青一(あおひと)の漢字が宛てられ、それがさらに一青(ひとつあお)に転じ、それをアオシトトの意味で、ヒトトと訓ませたと推考される。もちろん、黒氏はクロジである。」(谷川健一, 1998. 続日本の地名-動物地名をたずねて-. 岩波新書(新赤版)559. 岩波書店)

途中、少し苦しい感じもしますが、この説によれば姓や地名の「一青(ひとと)」はアオジのことで、そもそもはホオジロの仲間を指す「シトト(=シトド)」と繋がっているということになります。

歌手の一青窈(ひととよう)さんの姓「一青」は、私などは最初、なんて独りよがりなペンネームなのかと思っていましたが、ちゃんと伝統的な名前だったのでした。ネットの情報によればこの方のお母さんが石川県出身で姓を「一青」とおっしゃったそうです。「もらい泣き」や「ハナミズキ」といった大ヒット曲をもつ女性歌手の姓はなんと千葉県に飛んできた珍鳥と繋がっていたわけです。

 

(※神鳥前川神社のサイトが再開されていることに気づきましたので、「神鳥前川神社のウェブサイトは、1ヶ月ほど前には閲覧可能でしたが現在見ることができないようです」との記述は削除し、同サイトの該当ページにリンクを貼りました。<2013年10月5日修正>)

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