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2010年3月27日 (土)

イギリス人ウォッチャーが見た舳倉島

Birdingworld01_2石川県能登半島の輪島の北約5キロの沖合にうかぶ小島、舳倉島(へぐらじま)はバードウォッチャーには有名な場所です。

日本海に浮かぶ離島の中には、春と秋の渡りの時期に、陸の渡り鳥が多く通過し、その中には本土ではなかなか見られない鳥が高い頻度で混ざっている島があることが知られています。そういった「珍鳥の島」の中でも、舳倉島は筆頭格ともいうべき知名度があります。

イギリスのバードウォッチング雑誌「バーディング・ワールド」の2010年1月号にこの舳倉島が17ページにわたって紹介されています(D. クーパー・B. ケイ「舳倉島 - 日本のフェア島」D. Cooper and B. Kay. 2010. Hegura-jima - The Fair Isle of Japan. Birding World, 22(12): 506-522.)。

この記事の冒頭の1節に「鳥の渡りのホットスポットとして、舳倉島は、これまで記録されてきた珍鳥(日本の意味での)の数の多さから、『日本のフェア島Fair Isle』と呼ばれてきた。しかしこの島は割合混んだ植生があるので、むしろ実際のところ、シリー諸島のセント・アグネス島St. Agnes, in the Isles of Scilly を思いおこさせるかもしれない」とあります。

フェア島はイギリス本土(大ブリテン島)の北東端から北東方向に並ぶシェトランド諸島とオークニー諸島の間に位置する孤島で、フェア・アイル・セーターを産する島として有名なようですが、バードウォッチャーには渡り鳥が通過する島として有名で、その重要性ゆえに鳥類観測所が設置されており、標識調査が実施されています。シリー諸島はフェア島とは大ブリテン島にかんして正反対の南東端の沖にあり、こちらも渡り鳥の島として有名です。

Birdingworld02
さて、バーディング・ワールドの記事ですが、本文は正味2ページ程度で、島の概略、アクセスなどと、著者たちが訪れたときのようすが紹介されています。外国人が訪ねることを想定した実際的な内容で、島にある2軒の民宿とその電話番号まで書いてあるのがすごいです。

ページ数の大半は、1点の地図と、49コマの写真およびそのキャプションに費やされており、島の外観や環境写真をのぞく46コマはこの島で撮影された野鳥の写真です。

珍鳥を考える上で面白いのは、当然のことではあるのですが、珍鳥が何かは地域によって異なることです。ヨーロッパの普通種は日本の珍鳥、日本の普通種はヨーロッパの珍鳥、というわけです。

この記事でも、ムギマキ、シベリアムクドリ、シロハラホオジロといった、日本人にもヨーロッパ人にも共通してあこがれの鳥の写真も掲載されていますが、多くの写真は、日本人にとってみると、これのために舳倉島というのはどうか?とつっこみを入れたくなるような種のものです。

ここに写真で紹介した見開きページでも、日本人にとって珍鳥といえるのは、右ページ左上のヨーロッパビンズイだけで、そのほかのコシアカツバメ、イワツバメ、ビンズイ、ジョウビタキ、イソヒヨドリなどは、それは本土で見ればいいのでは?という鳥です。

一方この見開きを見たヨーロッパ人はおそらく逆に、その他の種はよだれが出るほど見たくても、はるばる東アジアの島国のそのまた離れ島まで行って、ありふれたヨーロッパビンズイなんか見せられても、面白くもなんともない、と思うのでしょう(このページではヨーロッパ人にとって珍鳥であるビンズイと比較対照のために載せているのでしょうね。写真のキャプションには、ヨーロッパとは逆で日本ではビンズイが普通種でヨーロッパビンズイは迷鳥だ、てなことが書いてあります)。

そう考えるとイギリスの雑誌に舳倉島が載るのは、日本でも珍鳥な東アジアの特産種を見られることもさることながら、むしろ日本では普通種の渡り鳥を狭いエリアで短期間に見られることに大きな眼目があるのかも知れません。この記事には、おおげさにいえば、舳倉島での日本人バーダーと外国人バーダーの同床異夢が表れているといえるでしょうか。

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コメント

はじめましてtoripanと申します。バードウォッチング雑誌「バーディング・ワールド」はどのようにして取り寄せて見ることが可能なのでしょうか?この記事を書いたご夫妻に実際に舳倉島で2シーズンお会いしているのでぜひ読みたいと思っています。

toripanさん、こんばんは。バーディングワールドはイギリスから購読が可能ですが、当該の号だけなら日本で探すのがよいでしょうね。ちょっと待ってください。

toripanさん、こんばんは。
Birding Worldですが、kumagerasuはもちろん持っているのですが、ここにkumagerasuの連絡先を書くのも憚られます。一カ所、公立の施設で持ってるかもということころに問い合わせてみたのですが、持ってないそうです。
こうなると、ごちゃごちゃしたことを言わずに、出版元からバックナンバーを買うのが早いようです。下記ページにメールアドレスが出ていますので、問い合わせてみてください。 
http://www.birdingworld.co.uk/BirdingWorldBackIssues1.htm

kumagerasuさん、ご親切に色々と検討していただき誠にありがとうございます。大学時代の1983年よりバードウオッチングを始め最近では写真を始めたりしていますが・・・鳥の写真ばかりのブログがほとんどのなか、kumagerasuさんの興味深いブログに出会いました。今後ともよろしくお願いいたします。さっそくですが問い合わせてみたいと思います。

初めまして、meguです。今年3月に舳倉島にて初バードウォッチングをしました。素人ですがきれいな鳥を見る事ができました。ただ名前が解らないのが淋しかったです。この次は少し勉強して頭の中に入れてから見に行こうと思います。帰りの船がもしかしたら一緒だったかもしれません(*^-^)

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