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2010年3月27日 (土)

鳥類画家小林重三 カンムリツクシガモを描く

Elphic_birds_s_2東京駅前、丸の内オアゾの丸善で鳥の絵の洋書を見つけました。

【タイトル】Birds. The Art of Ornithology.
【著者】Jonathan Elphic
【出版社】Rizzoli International Publications, Inc., New York.
【発行年】2008

【ページ数】336pp.

【判型】15.8 x 13.4 x 3.2 cm

【価格】$19.95


【ISBN】978-0-8478-3134-0
【備考】イギリスからはScriptum社から同じ内容で同じサイズのものが出ているようです。

片手で持てる小型のこの本が棚に平積みになっているのを見たとき「あっ」と思いました。これは、もう何年も前にやはりこの丸善で見つけて、さんざん迷ったあげく買わなかった大型本の小型版ではないか、とピンと来たのです。

Elphic_kobayashi_crested_shelduck急いでページを繰ると、ありましたありました、前の本を買いたかった理由である、小林重三(こばやし・しげかず;1887-1975)の筆になるカンムリツクシガモの番いの絵が出ています。

やはり思ったとおりだったようです。大型本のほうは、あとからネットで検索してみると、2004年にイギリスのScriptum社から出ている同名の書籍のようです(そちらのサイズは、28.6 x 27.4 x 3 cm)。

この本は、おもにイギリス自然史博物館(The Natural History Museum) 所蔵の作品を使って、鳥類の博物画の歴史をたどった書物です。章立ては、 1.銅販画家(engravers)と探検家たち(1650-1800)、 2.オーデュボンと初期のリトグラフ作家たち(1800-1850)、 3.リトグラフの黄金時代(1850-1890)、 4.移行の時代(1890-今日)、の4章からなっており、オーデュボンJohn James Audubon、グールドJohn Gould、キュールマンスJohn Gerrard Keulemans、ソーバーンArchibald Thorburnをはじめとした作家による美しい作品がページを繰るごとに出てきます。

本書に1点だけカンムリツクシガモの絵で登場する小林重三は、日本の鳥の三大図鑑といわれる、「鳥類原色大図説」(黒田長礼、1933-34)、「日本の鳥類と其の生態」(山階芳麿、1934・1941)、「日本鳥類大図鑑」(清棲幸保、1952)をはじめ、戦前戦後の鳥類学の刊行物に多数の絵を描いている日本の鳥類画の大先達です。

その作品は非常に端正で、鳥をよく知っている人でなければ描けない自然な姿勢と細部の正確さをもち、古くからの鳥類研究者やバードウォッチャーにはファンの多い画家です(注1)。

本書の図も、小林重三らしい端正な水彩画で、たたずむカンムリツクシガモの雌雄をリアルに描いています。解説文でも「古典的な日本画の装飾的、直観的なアプローチと、現代の西欧の識別用イラストレーションの明快で科学的に正確なスタイルをあわせて、後の時代のピーター・スコット卿Sir Peter Scottや、ロジャー・トリー・ピーターソンRoger Tory Petersonを思わすような作品を描いてる」と褒めています(注2)。

画題となっているカンムリツクシガモは、東アジアに分布していたことが知られていますが、世界中に標本が3点しかなく、絶滅した可能性が高いと考えられている珍しい鴨です。雌雄とも美しく、東アジアのバードウォッチャー、鳥類学者にとっては幻の鳥と言えるでしょう(注3)。

あこがれの小林重三が、夢のカンムリツクシガモを描いた絵が載っているのですから、以前大型本を見たときはだいぶ迷ったのですが、大きさと値段からあきらめました。

ですが今回は、小さなサイズと2千円ちょっとの価格から迷わず購入しました。ほかにも、17世紀のかなりプリミティブな絵から、20世紀の精緻な絵まで、いろいろの絵がでていますので、ぱらぱらとページを繰って楽しんでいます。

  
(注1)小林重三については、「鳥を描き続けた男」(国松俊英、晶文社、1996)という伝記が出ています。また、平塚市博物館の図録「鳥類画家小林重三」(1994)にも簡単な評伝と年譜、著作目録が、いくらかの作品とともに載っています。小林重三は、このイギリス自然史博物館所蔵の作品とは別に、「カモ類の自然史」(J. C. Phillips. 1926. A Natural History of the Ducks. vol. 4. Houton Mifflin, Boston.)という研究書にもカンムリツクシガモの絵を描いています。

(注2)余談ながら、この解説が傑作で、作者名をコバヤシ・シゲルとしている上、雅号がコケイだったと書いています。日本画家の小林古径との混同があるようです。英語さえできれば世界のあらゆる情報が容易に手に入るというのは大いなる幻想で、実際にはたとえば日本語、たとえばオランダ語、たとえば××語など、それぞれの国の言葉ができないとわからないことというのはいっぱいあるのですね。

(注3)カンムリツクシガモの興味深いエピソードについては、インターネットで、「所蔵名品から 世界に3点しかない絶滅鳥-カンムリツクシガモ(ガンカモ目ガンカモ科)-」(柿澤亮三、山階鳥研NEWS, no. 129)を読むことができます。

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コメント

初めまして!以前から興味深く拝読させていただいています!
シギチ大好きの はしも と申します。
Shore Birds In Japan というブログをつくっています。

Birding World の記事は実は私もブログで取り上げていたので同じことを思っている方がいることが嬉しくて思わずコメントを書いてしまいました!

今後も楽しく拝見させていただきます!
よろしくお願いします!

はしもさん、こんばんは。

コメントありがとうございます。また何かお気づきのことがありましたら、コメントお願いします。

 ブログ拝見いたしました。5月15日より、千葉県の流山市にあります流山生涯学習センターで、小林重三展が開催される予定です。
画家小林重三の画業の全容が展示される展覧会になると思われます。
 入場料は無料になるかと思われますので、是非ご来場ください。

内田孝人様
小林重三の展覧会のご案内ありがとうございました。ぜひうかがいたいと思います。

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