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2008年3月 1日 (土)

「ラクダの鼻」の次は「カエルの鼻」なのだ!

Sヒキガエルは、早春に冬眠から一旦起き出し、生まれた池に戻って、沢山の雄雌が集まって産卵と授精をします。「蛙合戦(かわずがっせん)」として知られている行動です。そのヒキガエルがどのような仕組みで池に戻ってくるかということを調べた研究を、一般向けに書いたのがこの本です(以前に読んだ本の紹介です)。

【タイトル】カエルの鼻
【著者】石居進
【出版社】八坂書房
【発行年】1997
【ページ数】189pp.

【価格】2000円+税

【ISBN】4-89694-694-4

ヒキガエルたちは自分の冬眠している場所から池までたどり着くのに、でたらめに歩いてたまたまたどり着くのでしょうか、月などの天体から方向を決めているのでしょうか、何かの方法で道筋を覚えているのでしょうか?

著者の石居進さんは大学の学生さんたちと一緒に、いろいろの実験をしながら、どのような仕組みでカエルが池に戻ってくるかの謎に迫ってゆきます。実際にどのような仕組みかは読んでいただきたいですが、石居さんたちは科学的な推論と実験を繰り返しながらその謎を解明します。

その意味で、この本はただ単にカエルの生態をやさしく書いただけの本ではないと言えます。むしろ、科学のプロセスを実例でやさしく解説した本である点が、この本の優れたところと言えるでしょう。

一般に「科学的」ということばは、理科の教科書にかいてある知識のこと、ないしそれをたくさん知っていることを指すように誤解されていることがありますが、「科学的」ということばは考えるプロセス、それを確かめるプロセスのことを指しているということが、本書をよむと理解されるとおもいます。

また、野生動物の生物学で、エレガントな実験によってものごとをあきらかにした例として、とても刺激的です。こういう研究ができたらどんなに楽しいだろうかと思います。生物学の研究を志されている中学、高校生や大学生の方に勧めたい本です。もちろん生物に興味のある大人が読んでも面白い本です。

余談ですが、クヌート・シュミット=ニールセンの自伝、The Camel’s Nose (ラクダの鼻)を最近読んでこのブログでも紹介しました。その「ラクダの鼻」を読んだとき、石居先生の「カエルの鼻」のタイトルは、シュミット=ニールセンの本を意識して付けられたのかな、と思いました。でも実際には「カエルの鼻」の出版のほうが1年早く、これは私の考えすぎだったようです。

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コメント

 僕がまだまだ若くて大学院で学んでいた頃(カエルの研究を始めるはるか前)、シュミット・ニールセンの研究に刺激を受けていたことは確かです。ですがこの本の題名の中の鼻という言葉が直接彼の研究の影響を受けたわけではありません。この題名は出版社の八坂書房のこの本の担当者の中居さんから提案されたものなのです。
 大学院を終えた頃だってでしょうか、マガモに塩水を注射して体内の塩類濃度を上げて抗利尿ホルモンへの影響を見る実験をしていました。体内の塩類濃度が上がると、このホルモンの分泌が盛んになって、ためてあったホルモンの前駆物質が減ると考えたのです。 
 ところがマガモは一向に平気で、ホルモン前駆物質の量は全く変わりません。不思議に思っているときに、シュミト・ニールセンの著書から鳥類の鼻の付け根にある塩類を排出する塩類線のことを知って、納得がいったのです。マガモはいくら濃い塩水を注射されても、右から左に鼻の付け根から、塩を排出していて、体内の塩類濃度はほとんど変わらなかったのです。
 そのときに、生理学の生態学、行動学との繋がりが非常に重要であることを僕は認識し、シュミット・ニールセンが以後の僕の研究の方向に大きな影響を及ぼしました。

カエルの鼻の著者様、興味深い研究のお話をお聞かせいただき光栄です。

> この本の題名の中の鼻という言葉が直接彼の研究の影響を受けたわけではありません

私のブログ記事のタイトルがいけないのかもしれませんが、ご指摘の件は承知しています。シュミット=ニールセンの'The Camel's Nose'の出版年は1998年ですが、先生の「カエルの鼻」の出版は1997年2月ですので、「カエルの鼻」の方が早いのです。ですので、むしろシュミット=ニールセンのほうが先生のご著書のタイトルに影響された可能性(^^)はあってもその逆はありえないことになります。そのことはこの記事の最後の段落にも記しておきました。

重ねて興味深いコメントありがとうございました。

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