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2007年8月25日 (土)

きゃー恐い!鳥好きというだけでは気楽に薦められない本格ミステリ

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日本のコウノトリは嘴が黒いですが、ヨーロッパのコウノトリは嘴が赤いシュバシコウというやつです。日本のコウノトリとは、以前は同種とされることが多かったですが、今は別種とされることが多いです(以前に読んだ本の紹介です)。

【タイトル】コウノトリの道
【著者】ジャン=クリストフ・グランジェ
【訳者】平岡敦
【出版社】東京創元社(創元推理文庫)
【発行年】2003
【ページ数】492pp.
【価格】1000円+税
【ISBN】978-4488214067

ヨーロッパのコウノトリ(シュバシコウ)は、ヨーロッパで繁殖し、アフリカに渡るのですが、そのシュバシコウの渡りを軸として展開するミステリです。

物語は、主人公の若者が、あるいきさつから鳥類研究者に依頼されて、今シーズンのコウノトリの渡来数が少ないことの調査を依頼されるところから始まります。

主人公はコウノトリがヨーロッパから越冬地へ南下するのにあわせて旅を開始しますが、旅の開始直前を皮切りに、主人公をめぐって次々と殺人事件が起こります。渡りルートを辿るように展開する物語には、人種差別、国際的な宗教的対立、怪しい組織などの影が見え隠れし、主人公は謎に呼び寄せられるようにコウノトリの越冬するアフリカの奥地に誘い込まれてゆきます。

コウノトリの生態が克明に活写されている、というほどではありませんが、それでもコウノトリには渡り調査用の番号付き足環が装着されているほか、電波発信機を背負わされて人工衛星で追跡されているなど現代の鳥類研究の道具立てがそれなりにきっちり描写されています。

それからイスラエルの鳥類学の研究所のようすなども出てきます。イスラエルは、ヨーロッパで繁殖した鳥がアフリカに越冬に渡るさいの主要な中継地で、実際にも活発に調査研究がされています。この本に描かれたイスラエルの研究施設がどのくらい本物に似ているのか知るよしもありませんが、レーダーでの渡り鳥調査など、なかなか本物っぽい感じです。
  
物語の詳細はもちろん書けませんが、鳥が軸となっていながら、「鳥好きの方であればどなたでもどうぞ」とは言えない恐い結末が待っています。とは言っても超常現象などが起こるホラーではなく、人間のすることしか起こりません。構成のしっかりした本格ミステリですので、ミステリ好きであるならば読んで損はない一級の作品と思います。もちろんその上で鳥がお好きならぜひお勧めします。

(蛇足ながら、文庫本のカバーは美しいデザインですが、飛んでいる鳥がコウノトリ類ではあるものの、小説に登場するコウノトリではなく、ヨーロッパには分布しない、トキコウの仲間らしいシルエットなのは、文字通り画竜点睛を欠く思いがします。)

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