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2007年5月27日 (日)

単子葉植物と双子葉植物の2大別って古いのか?!

Photo_39生物学の研究ではモデル生物というものがしばしば登場します。20世紀の遺伝学はショウジョウバエを世界中でよってたかって研究した結果大きな成果をもたらしたわけで、まさにそれがモデル生物です。これから紹介する本では、モデル生物(モデル植物)としてのシロイヌナズナを軸に話が進められます(すこし前に読んだ本の紹介です)。

【タイトル】変わる植物学 広がる植物学
【著者】塚谷裕一
【出版社】東京大学出版会
【発行年】2006
【ページ数】227pp.
【価格】2400円+税
【ISBN】4-13-063327-9

本書では、近年のDNA研究で大活躍しているこのシロイヌナズナを軸に、植物学の近年の変遷や現状が紹介されています。

先のショウジョウバエがそうですが、世界中の研究者が手分けしたり競争したりして研究することで相乗効果があがり、生物の普遍的仕組みがより一層わかることがモデル生物の大きな利点です。本書では、伝統的な植物学研究ではほとんど顧みられてこなかったシロイヌナズナが、どのようないきさつと生物学的特性の故に突然モデル生物の地位に躍り出たか、モデル生物にはどのような利点があるのか、などが説明されます。

大きな利点があるモデル生物研究ですが、一方研究の潮流の変化によってモデル生物にも栄枯盛衰があり、また生物は多様性があるので、1種の生物であらゆる生物のすべての仕組みがわかるわけではないことが説かれます。

巻末の著者紹介を見ると著者は40代前半で、まだ長老とかという年齢ではとてもない方ですが、学生時代から見てきた学界の潮流の変遷から、若い研究者に、流行のテーマや材料だけに没頭しすぎず、生物学の研究全体の中で自分がどこにいるかを常に意識して研究せよと忠告しています。

さて、私自身は植物学の新知見について特にフォローしているということはないので、この本でいろいろ驚かされることがあったのですが、その一つが、種子植物を単子葉植物と双子葉植物に二大別するのは誤りだという話です。

近年の系統研究によると、イネやらユリといった単子葉植物はモクレンやらクスノキの枝の中に含まれてしまい、それとは別に全体が双子葉植物である、キンポウゲやマメやナスやキクの含まれる大きな枝があるんだそうです(つまりクスノキは、マメとイネと比べると、イネが近い親戚なのだそうです!)。

また、DNA研究によって、生物学ではかならず教わる「相同」と「相似」の考えに大きな揺さぶりがかけられているという話もびっくりしました。これは、エボデボEvolutionary Developmental Biology(進化発生学)とよばれる、DNA研究によって発生現象を明らかにしようとする分野の成果だそうです。

「相同」とは、例を挙げれば鳥の翼とコウモリの翼のように、体の作りの上から起源が同じということです(両方の翼とも、脊椎動物の前肢(前足ですね。魚の胸鰭が陸に上がって足になった)が変化した)。「相似」の例はたとえば鳥の翼とハエの翅で、飛ぶという機能は同じだが、体の作りの上から起源がことなっている、という意味です。

従来、ショウジョウバエの脚とヒトの足は機能が同じだけの相似と考えられてきたわけですが、エボデボの研究によれば、その極性を決めるのに同一の遺伝子セットが制御しているとのこと。また哺乳動物の目とショウジョウバエの目はやはり、見るという機能が似ているだけの相似と考えられてきたが、目の形成のスイッチを入れる遺伝子は同じだそうです。

なるほど生物というのは奥深いものだとびっくりするやら感銘をうけるやら、とても興味深いです(でも素人考えですが、細かい遺伝子というのは部品みたいなもので、同じ部品を使っていれば、全体が同じ起源とは言えないような気もするのですがどうなんでしょう?間違ってるかな?)。

また、モデル生物のDNA研究によって、伝統的な形態学の、互いにつながりのない、いわば雑多な知識に統一的な理解の光があたりつつある、といった点も非常に面白く読みました。

それで思ったのですが、古い博物学的知識、たとえば、鳥であればキジ類の羽毛には後羽(=1枚1枚の羽毛の裏についているミニ羽毛)があるけどハト類にはないとか、足の鱗がこの鳥では梯子状だがあの鳥では網目状だとか、腸のねじれ方がこのグループとあのグループでこう違うとか、そういった、今はほとんど誰も見向きもしないような古色蒼然としたテーマが、DNA研究の進展によって、ある日突然一周遅れのトップランナーのようになるのでは、と感じました。

ちょっととりとめのない紹介になりました。DNA研究の専門的な内容もかなり出てくるので、場所によってはおおまかなあらすじを推測するしかない所もかなりありましたが、非常に興味深く読みました。

本書の著者の著作として、すでにこのブログで「ドリアン」を紹介しています。


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