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2007年3月10日 (土)

どうしてトウネンとヨーロッパトウネン、チュウヒとヨーロッパチュウヒが?

Sbofbirds
ばたばたとしておりまして、更新をさぼっておりましたが、久しぶりに更新したいと思います。イアン・ニュートンによる鳥類の生物地理学の本の紹介です。(以前書いた紹介文です)

【タイトル】Speciation and Biogeography of Birds
(鳥の種分化と生物地理学)
【著者】Ian Newton
【出版社】Academic Press
【発行年】2003
【ページ数】668pp.
【価格】$81.73
【ISBN】0-12-517375-X

イアン・ニュートンといえば、ハイタカやフィンチ類の生態学研究で知られる鳥類学者ですが、動物地理学のこんな大部の著書をものするとは大きなおどろきです。動物地理学という学問は古くさいようですが、近年はDNA研究その他の隣接分野の発展によって新たな光が当てられ、非常に刺激的でかつ今後の展開が楽しみな分野になってきています。
  
 著者は、該博な知識をもとに、世界の鳥類の動物地理を概観しつつ、DNAによる研究の新知見を要所要所に組み入れて、読者を啓蒙しまた今後の課題を紹介しています。本書で紹介されたDNA研究を見ると、従来までとは異なるいろいろの知見が出てきているのに驚く一方で、これはまだまだ緒についたばかりだなということも実感されます。
  
 動物地理学というと、まず頭に浮かぶのは世界が旧北区、東洋区、などに大別されているという話と、南西諸島など、島が海進と海退によって陸続きになったり離れたりして種分化するということだろうと思いますが、私がこの本でもっとも印象に残ったのは、ユーラシアの東西でよく似た種のペア(たとえばチュウヒとヨーロッパチュウヒ、トウネンとヨーロッパトウネン、カワラヒワとアオカワラヒワなどなど)がいくつもいることの説明でした。

これはユーラシアを東西に仕切るような海が昔あったというわけではもちろんないわけです。ユーラシアの中央が広く氷床に覆われ、大陸の東西に氷床に覆われないリフュージア(待避所)があったため、氷河期以前は広く分布していたそれぞれの種のペアの共通祖先が東西のふたつに分かれて進化した、という説明になっているそうです。

もしもユーラシアを東西に仕切る海があったのだとすると、東西の近縁種のペアの分布の境界が昔の海峡に沿ってきれいに揃っているはずですが、実際には種のペアごとに分布の境界の位置、それが接しているかいないか等がまちまちです。それから、東西のペアが別種のもの、同種の別亜種のもの、そして亜種も同じで分布のみ東西に分かれているというようなものもあります。

これは分類群ごとに生態や生息環境がことなるため、氷床の東西にできたリフュージアの効果や、繰り返し起こった氷期と間氷期の影響がことなったり、また、氷期が終わったあとのリフュージアからの分布の回復状況がことなるためで、まさにこのことが氷床の存在による分断による種分化の状況証拠ということのようです。

古典的な動物地理区の話にも1章があてられていますが、この北半球の氷河の話には2章があてられており、このことは基本的に初めて知りましたので、大変感銘を受けました。このことは何も近年の知見ではないようですが、これについてもDNA研究が紹介されて、従来の知見との整合性が検討がされています。
  
本書は大変大部ですので、なかなか読破するのが大変ですが、非常に興味深い話がいろいろつまっていますので、分類学や動物地理学の見地から鳥類に興味のある人はぜひ読まれるとよいと思います。

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