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2006年7月 9日 (日)

戦争映画、でも自然観察です!(3)

グレゴリー・ペック主演の戦争映画「頭上の敵機」の話題もやっと、自然観察で使われている「何時の方向」問題までたどりつきました(これまでの話題は以下をクリックしてください→戦争映画、でも自然観察です!(1)戦争映画、でも自然観察です!(2))。

「何時の方向」の疑問は、時計の文字盤を自分に対してどのように置いたと考えるかにあります。先日紹介した、アメリカの探鳥会や、日本野鳥の会横浜支部の野鹿を見る会での例は、自分の正面に視線と直交するように文字盤があるように見立てています(そこまで書いてありませんが、時計は自分の方を向いているんでしょう)。

「頭上の敵機」ではどうなっているのか、見てみました。

空中戦の場面は、第二次大戦で、アメリカ空軍やドイツ空軍が実際に撮影した映像が使用されているとのことで、たいした迫力です。そして、空中戦シーンでは、「何時の方向」というセリフが繰り返し出てきます。ですが、実際のところ、そのセリフが出てくるときに、自分の飛行機と相手の飛行機の位置関係がはっきりわかるような映像が出るわけではなく、映像からは、よくわかりませんでした。

映像からはよくわからないのですが、(非常に貧弱な聞き取り能力ながら)セリフを注意深く聞いてみると、"Twelve o'clock high"のほかに"Twelve o'clock level"などとも言っているのがわかります(もちろん時刻は12時だけ出てくるわけじゃないです)。

"level"は目の高さです。どうも"Twelve o'clock high"は「12時の高さ」ではなく、「12時で上」と考えるほうがつじつまがあうようです。つまり、12時は正面であることを示し、highは目の高さより上にあることを示している、すなわち時計の文字盤は、自分を中心とする水平面に当てはめられているのでしょう。言い換えれば、12時が高さの程度を表しており、時計の文字盤は自分を中心に上下左右を含む垂直な平面にあてはめられているということではないようです。

そう思ってネットで検索してみると、まず日本語のサイトでは両方の説があり、12時が自分の真上であることを表しているというもの、12時は正面を示しており、Twelve o'clock highは方向が正面で高さが上という意味としているものがありました。後者の中には、「頭上の敵機」としたのは誤訳である、と言っているものもありました。

英語のサイトはパイロットのスラングなどとして探した2〜3のサイトを見たかぎりでは、すべて12時が正面、6時が真後ろとしています。たとえば、PC Pilotというページでは"Twelve o'clock"を、「飛行機の正面の位置;しばしば、水平線との位置関係によって、"high"あるいは"low"という語で修飾する」としています。

どうも時計は水平面で真正面が12時というのが、「頭上の敵機」などパイロットの用法のようです。もちろん、自然観察でどう使うかは、使う人の間で共通の認識があればどう使ってもよいわけです。実際に海上の観察などでは、「頭上の敵機」同様に文字盤が水平に置かれていると想定すれば便利でしょうし、そのように使われているかたはいらっしゃるかもしれません。逆に、アメリカの探鳥会の例のように正面に樹木が立っているときは、その樹木の幹を6時-12時のラインにした垂直の文字盤を想定するのがよいでしょうね。

とりあえず「頭上の敵機」に触発された「何時の方向」ネタの調査はこんなところで私の調査能力の限界に来たようです(もちろん、お金や時間をもっとかければもっと調べられるかもしれませんが)。500円DVDから根掘り葉掘り詮索して、なかなか面白いことでした。

【PS】ここまで書いて、ふと気づいて念のため手元のアメリカのCollege Dictionaryでo'clockを見てみると、この辞書の説は柔軟で、「12時が真正面または真上にあたる、時計の文字盤であるかのように、(特に接近しつつある飛行機の)方向を示すために用いられる」といった解説でした(Guaralnik, et al. eds. 1979. Webster's New World Dictionary of the American Language. 2nd. college edition. William Collins. )。見た範囲でのパイロットのスラング関係の英文サイトは文字盤が水平の説でしたが、こうしてみてみると英語圏でも両方ありらしいということがわかりました。


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コメント

2009年春に久しぶりに小笠原に行ったとき、おがさわら丸の船内でホエールウォッチングの解説をやっていて、時計になぞらえて方位を伝えるこの方法が、クロック・システム(clock system)と呼ばれていることを知りました。ホエールウォッチングの場合はもちろん文字盤は水平に置かれていることになります。

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